空をなくしたその先に
思い出したくもない負け戦。

あの時自分が助かったのは、サラが機転をきかせてくれたからだ。

「息子の最後の出撃の時、一緒に飛んでいたのはダナだということは?」

「聞いてる。ダナだけが生き残ったということも」


その言葉をきいて、ビクトールは大きなため息を吐き出した。
「親というのは愚かなものですな、殿下」

「……」

「ダナを見るたびに思うのですよ。

生きていてくれてよかったと。
それと同時に呪いたくもなる。
なぜヘクターだけが逝ってしまったのかと」


意外だった。

ディオの目には二人は、本当の親子以上の信頼関係を結んでいるようにうつっていたから。


「これはダナは知らないのですが」


何といったらいいのかわからないでいるディオに、ビクトールは続けた。


「二人が発見された時、ダナの方にだけ応急手当がしてあったというのですよ。

手持ちの医薬品だけでは、ろくな手当もできなかったでしょうが」
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