空をなくしたその先に
容赦なくゆさぶられて目が覚めた。


「時間よ」


ダナが上から見下ろしている。

すでに彼女は飛行服に身を包み、右手に帽子とゴーグルをぶらさげていた。

ディオは目をこすりながら、ベッドから這うようにして出た。
服を着たまま寝ていたから、その上から飛行服を身につければいい。

コーヒーを渡されて、熱いそれを冷ましながら流し込む。


「朝食食べたかったら、生きて戻らないとだね」


ひとりごとのようにつぶやく。

ダナはディオを連れて、甲板へとあがった。

格納庫で待ちかまえていたルッツが、首にタオルを巻いたまま出迎える。


「おっはよう!いい夢見られた?」

「夢も見ずにぐっすりだったわよ」


いまだに一人では乗り込めないディオを、ルッツが後部座席へとおしあげた。

吐きそうだ、とディオは思った。

ビクトールと別れてからは、ダナに起こされるまで夢も見ずに眠ったが、緊張のせいか頭が痛い。

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