空をなくしたその先に
リディアスベイルの艦橋は静かなものだった。

持ってこさせたコーヒーをすすりながら、ライアンはやる気があるのかないのか判断しかねる態度で、戦場を眺めている。


「ビクトールはどう動く?」


コーヒーカップを手にしたまま、ライアンはサラに視線を向けた。


「そろそろ右手から新しい部隊を展開させるのではないかしら」


「それじゃそっちの守りを強化するか」


サラの予想を迷うことなく受け入れて、ライアンは自分の率いる五隻の軍用艦を、サラの予測した場所へと向ける。

彼の部隊は、今回に限り独自行動を認められていた。

ビクトールの思考を完全に読める者がいる。

それが彼の部隊の強みだ。


「本当は怖いんじゃないのか?」

「……何が?」


サラは眉をあげてライアンを見つめる。


「……いや」

自分に向けられる冷ややかなサラの視線に、思わずライアンはたじろいだ。
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