空をなくしたその先に
「……サラ、か」


攻撃をことごとく交わされて、ビクトールは苦笑いした。

サラが幼い少女だった頃、まだあの二人が生きていた時からそばに置いてきた。

ハーリィとオリガから実戦に必要な全てを教えこまれて。

ビクトールの指揮を一番近いところで目にして。

思考回路は完全に把握されて当然ということか。

さて、これから先どう出るか。
ビクトールは戦場に鋭い目を向ける。

頭を忙しく回転させて、敵の動きを先読みしようとする。

敵の動きから判断するところ、リディアスベイルを旗艦としているようだ。

契約したばかりの傭兵艦を旗艦にするある種の剛胆さには賞賛の拍手を送るべきなのかもしれない。

それならば、こちらはこう出てやろう。


「攻撃を強化しろ。リディアスベイル以外に、だ」


部下を見殺しにできるか否か?

ビクトールは相手の指揮をためす気になっていた。

見殺しにするならそれでいい。
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