空をなくしたその先に
「エレン、ロナルド、フェイス、ディラン、ハーヴェイ、イネス、ユール、マリオン、アイザック、レティシア」


アーティカからついてきてくれた部下たち全員の名前を呼ぶ。
「共に来てくれたこと、感謝するわ。

脱出したらアーティカに戻るもよし、別の傭兵団に加わるもよし、あなたたちの好きにしなさい。

戻るなら、ビクトールはあなたたちを受け入れるでしょう」


大きく息を吸い込んで、サラは最後に嘘を吐く。


「私は最後に脱出するから、救命艇を一つ残しておいて。
あなたたちは急ぎなさい」


部下たちにライアンを連れて脱出するようにと告げ、サラは脱出する彼らを見送った。

不安そうな笑みを向けるエレンには、穏やかな笑みを返して見せて。

サラは三つ編みにして背中に垂らしていた髪をほどいた。

艦の中を一回りして、誰も残っていないのを確認してから甲板へとあがる。

どうせ艦とともに落ちるのならば。

空を見上げながらの方がいい。

風が髪を乱す。

もう一つの世界では、彼と再会できるだろうか。

サラは唇にのせる。愛しい彼の名を。

< 467 / 564 >

この作品をシェア

pagetop