空をなくしたその先に
「お招きにあずかり、光栄です……殿下」


ビクトールにうながされるまでもなく、流れるような自然な仕草でダナは頭をさげた。


「あら……殿下よ?」

「こちらにいらしていたのね」

ひそひそとささやいているつもりが、少しもささやきになっていない。

しっかりとディオの耳にも届いて、苦笑いさせる。

さっきからここにいたというのに、どれだけ影が薄いというのだろう。


「……踊ってもらえないかな」

「喜んでお受けします、殿下」


手を取って出ていく二人に、後ろからフレディが声をかけた。


「ディオ!あとでかわれよ!」


フロアは人でいっぱいだった。
ぶつからないように用心しながら、二人もその輪の中に加わる。


「あら?」


ダナが驚いたように小さな声を発した。


「背、のびた?」


いつか船室で踊った時には、同じ位置にあったはずの頭が、今はほんの少しだけ高い位置にある。


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