空をなくしたその先に
「それならいいんだけどね、靴が上げ底なんだ」


苦笑いしながら、ディオは白状した。

女性が踵の高い靴をはくと、ディオより頭の位置が上になることも多い。

以前からこういう場に出るときは、背が高く見えるようにと細工をした靴を履くようにしている。


「ダナは縮んだ?」

「あたしは、ぺたんこの靴だから」

「何で?」


くるりとターンしながら、ダナは頬を膨らませる。


「ディオが言ったでしょ。女性の方が背が高いと踊りにくいって」

ターンさせたダナの背中にもう一度腕を回す。


「覚えてたんだ」

「……覚えてるわよ」


あの会話を交わしたのが、ずいぶん前のように思われる。

そのまま数曲踊って、ダナをフレディに引き渡した。

ディオに誘ってほしそうに、視界の隅をうろうろしている女の子たちには気づかないふりをして、

壁際にいたビクトールに話しかける。
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