空をなくしたその先に
「俺さ、本当はディオの従兄じゃないんだ」


いきなり話の方向を変えられて、ダナの混乱に拍車がかかる。


「本当は兄なんだよ。

母親違いの……ね。

俺の母親は前国王の寵妃だった女性なんだが、身分が低かったのさ。

ゆえに俺は王位を継ぐ権利を奪われて、カイトファーデン家に押しつけられたというわけだ。
生まれた順番から言えば、俺の方が先なのにな」


どこかで聞いたような話だ。

似たような話はいくらでもある。

けれど、すぐ身近で聞いた話。
もつれた糸はすぐに解けた。


「あなたのお母さんって、イレーヌさんのお姉さん?」

「勘がいいな。

そう、彼女は俺の愛人じゃなくて叔母なんだ。

彼女の美貌なら、俺の年上の愛人と言っても不自然じゃないしな。

武器商人ってのも、王位を奪うには何かと好都合だろ」


何ということなのだろう。

最初に胡散臭い相手だと思ったのは間違いではなかったのだ。
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