空をなくしたその先に
ヘクターを、すべてを失ったあの戦。

原因は目の前の男だというのか。

拘束された手をふりほどこうと暴れるダナに、フレディは静かに語りかけた。


「ヘクターのことは、本当にすまなかったと思っている。

言い訳がましいけど、あの日出るのはアーティカじゃなかったはずなんだ。

俺だってあいつには死んでほしくなかった。

それにアーティカとは、ある程度軍の力をそいだところで、契約を持ちかけるつもりだったんだよ。

アーティカの力は敵に回せば恐ろしいが、味方にすれば心強いしな」

「アーティカは契約相手は裏切らない!」


拘束された手が、縄でこすられ血がにじむ。

それにもかまわずダナはどうにかして拘束された手を縄から引き抜こうとし続ける。


「そうかもな。でも契約相手が死んでしまったら、話は別だろ」


暴れていたダナがおとなしくなった。


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