空をなくしたその先に
安置所の鍵を持っているのは、ごく限られた人間だけだ。

当然ディオはその一人だが、甥のフレディには渡されていなかったはずだ。

きっと彼は鍵を入手していることだろうが、指定された時間より少し早めに行って鍵を開けておくことにした。

彼より先に行って、しておきたいこともある。

夜明け前に現れたディオに、公園の入り口を警備していた兵たちがいぶかしげな視線を投げる。

手にした小さな花束を見て、得心したようにディオを通した。
父と子の対話をしにきたと解釈したのだろう。

そのまま公園を急ぎ足に通り抜けて、安置所の前に立つ。

石造りのそれは、かなり高い建物だった。

安置所の前を警護していた兵士たちも黙ってディオを通してくれた。

数十段の階段をのぼって、鍵を自分であけ、中に入る。

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