空をなくしたその先に
残された子どもをどうするか。当時たいそう揉めたらしい。

最初ディオゲネスは、寵妃の生んだ実子として引き取ることも考えた。

当時彼の正妃はもう死亡していたが、子どもの世話なら乳母を雇えばすむ話だ。

しかしそれでは、将来反乱者の息子が王位を継ぐことになってしまう。

それにはフェイモスが反対の意をとなえた。

王家とはまったく関係のないところ、たとえば他国へ養子に出すか。

誰にも存在を知られていないのならば、いっそ命を奪ってしまうか。

兄弟が揉めているところへ、救いの手をさしのべたのが、末の妹フレデリーカだった。

すでにカイトファーデン家に嫁いでいた彼女には実子はなく、女系には王位継承権はないことから好都合な提案といえた。

子どもはフレデリーカに名前を与えられ、カイトファーデン家の長子、唯一の息子となった。
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