空をなくしたその先に
「一生罪人として牢獄暮らしか?そんなのもっとごめんだね」


フレディは銃を空に向ける。

響いた銃声は、彼なりの別れの挨拶だったのだろうか。


「ディオ、俺は本当におまえの兄貴だったらよかったのに、と思うよ」


空を向いていた銃口が、フレディの頭に向けられた。

彼は笑った。

この状況で。

彼は笑って見せた。

本当は王位なんて欲しくなかった。

望んだのは息子として認められて、義理の母を支えながら半分だけ血のつながった弟に、いろいろな悪さを教え込む。

ただ、それだけだったのに。

それほどだいそれたことではないと思っていた。

自分が他人の息子、反逆者の息子でさえなかったなら。


「僕だって!だから!」


ディオの言葉も、もう耳には届かなかった。

引き金をひいた。

笑ったままで。

彼の名を呼ぶ声だけが、冷たい風を通り抜けて耳まで届く。

そのままフレディは、後ろへと倒れ込んだ。

そこには地面はない。彼の身体は海の中へと落下していく。

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