空をなくしたその先に
「センティアが技術の面では一番進んでいるからね。

このまま自分の国にいたんじゃだめだと思う……今度は」


ディオはダナの顎に手をかけて、顔をあげさせた。

瞳をのぞきこむ。

一番奥までずっと。

ざわざわとする胸をおさえつけて、ダナはディオの次の言葉を待った。


「今度はみんながもっと幸せになれるような研究をするよ。

それだけじゃ償いにはならないだろうけれど」


どちらからともなく寄せた唇が触れ合ったのは、ほんの一瞬だった。


「センティアまで会いに行ったりなんかしないんだからね?

これでもあたし、けっこう忙しいんだから。

空盗退治に国境警備。やらなきゃいけないこと、たくさんあるんだから」


ディオの肩に顔を埋めて、ダナはつぶやいた。

互いの背に回した腕に力が入る。

少しでもこの時を長引かせたいと願っているかのように。
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