空をなくしたその先に
ディオの手が、顎まで伸びた髪をそっとなでる。


「わかってるよ、そのくらい」


ディオはダナから離れると、鞄の口を開いて中に手を入れた。
しばらく中をかき回した後、何かを取り出してダナの手にのせる。


「これって……?」


手にのせられたのは、フォースダイトの破片。


「エメラルドってわけにはいかないけれど……持っていてほしいんだ、君に」


十二の誕生日に両親から贈られたフォースダイト。

これから全てが始まった、一番大切な物。

そのことは彼女には言っていなかった。

けれど、ディオの想いをくみ取ったように笑顔を作ってくれる。


「……ありがと。大事にする」


ダナは受け取った石を両手で包みこむようにした。


轟音をたてて汽車がホームに入ってくる。


「さよなら」


ダナにそう言い残してディオは汽車に乗り込んだ。

個人の財産は全て寄付してしまったとはいえ、親族からの援助で当面は生活に困ることはない。
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