空をなくしたその先に
「別について行ってもよかったんだぜ?」


汽車が見えなくなるまで見送っていたダナの肩に、ルッツが手をかけた。


「そんなんじゃないもん、あたし達」


大切に胸元に石を抱え込んでダナは、ルッツを見上げる。


「ところでケーキご馳走してくれるって話どうなったのよ?」

「まだ有効」


片目を閉じようとして、ルッツはうっかり両目を閉じてしまう。


ダナが笑い声をあげた。


「やだ、ウィンクできないんだ?」

「あんまり言うとケーキ買ってやらないぞ。

それにビクトール様の分も買って帰らないとな」

「あの人、案外甘党だものね」

二人は並んでホームを出ていく。

見送りの人間の中で、ホームを後にするのは彼女らが最後だった。

ホームから出た瞬間、ダナの頭は次の任務へと切り替わる。

ディオを思い出させるのは、手の中に抱えた石だけだった。
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