空をなくしたその先に
「空賊ってあの船ね。

射撃準備して。

まずは威嚇するからそのつもりで」


ダナは前方をにらみつけた。

優美な姿の客船にせまる空賊の船。

射程距離に入る前に、空賊の船が客船めがけて牙を向いた。


「前言撤回。射程圏内に入ったら即撃墜!」


肩から前に落ちてきた三つ編みを、背中の方へとはねのける。
人目を引く見事な赤の色は、腰の長さまで髪が伸びても以前と変わらない鮮やかさだ。

ダナは、空賊との距離をはかった。

慎重に距離を見定めて、右手をあげる。


「撃て!」


命令と同時に、砲が火をふく。

空賊の船とアーティカの船では装備が違う。

残念ながら弾は外れ、方向を変えて逃げ出す空賊船を見送って、ダナは肩をすくめた。

マグフィレット領内にいるのなら、相手が降参するまで追いかけ回すところなのだが、ここはセンティア領内だ。

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