空をなくしたその先に
5.サラ
働かざる者食うべからず、ということか。

ジャガイモの皮むきは固辞したものの、


「皮むかないとお昼ご飯食べられないわよぉ?」


と、サラに言われてしまってはどうしようもない。

結局のところ、船にいる間は労働力を提供しろということなのだろう。

そう思えばビクトールのディオに対する扱いは、
破格だったのかも知れない。

リディアスベイルの厨房は、船の下の方にあった。

サラに連れられて、いくつもの階段をおり、
厨房へと足を踏み入れる。

フォルーシャより小型とはいえ、船に乗っている人数はかなりのものだ。

したがって、むかなければならないジャガイモの数もそれなりに、ということになる。

厨房にいたのは、覇気のない中年の男だった。

ジャガイモを一つむいては、ため息をはく。

人参に一回包丁を入れては、ため息をはく。
< 73 / 564 >

この作品をシェア

pagetop