空をなくしたその先に
作業は遅々としてすすまない。

というよりやる気がないのだろう。

野菜のスープとパンを食卓に並べればいいのだと聞いて、

テーブルに肘をついて

同じようにのろのろとジャガイモの皮をむいていたディオは立ち上がった。

この後におよんでも、上着だけは手放そうとしない。

コックのエプロンを借りて、上から羽織る。

大学の寮には、食堂やコックなどと言うものはついていない。
寮生皆で使える共通の厨房があり、皆自分の食事はそこで作るのだ。

というのは建前で。

下級生は、上級生に言われて食事を作らされることが多い。

男子学生ばかりだから、野菜を切ってどかどかと鍋に放り込んでひたすら煮込む。

運がよければ、肉や魚も入る。といったおおざっぱなものが多い。

それと同じ要領でいいのだろうと勝手に解釈して、
ディオは包丁を動かし始めた。
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