空をなくしたその先に
「あらあら、ノックしなさいって教わらなかったの?

ビクトールの教育もなってないわね」


室内には、ほかに数名しかいない。
自動航行になっているのだろう。

皆、驚いた様子もなくサラの後ろにひかえ、
それぞれの作業に没頭している。

しんと室内は静まり返っている。

計器類のたてるごくわずかな音だけが、室内を支配していた。

「まったく……おとなしくしていれば無事にビクトールのところへ返してあげようと思ったのに」


ため息混じりにサラは、腰の銃を抜いた。

長い三つ編みを、肩から背中へと払いのけて姿勢をただす。


「違うわね……本当にそう思っていたらここに鍵かけておくもの」


まっすぐに、ダナの胸に向けられる銃口。

そこに迷いなど一切なかった。
持ち主が望みさえすれば、いつでも銃弾は飛び出して目標を撃ち抜くだろう。

思わずダナが一歩下がる。

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