空をなくしたその先に
ダナが拳を握りしめた。


「ビクトールは、ヘクターを殺したあなたの治療に多大なる労力を払った。

二年も王立病院にいるなんて、どれだけの金額がかかるか予想つくでしょう?

それもまだ我慢できたわ。

だって、あなたはビクトールの親友の子どもだから。

だけど」


ダナに向けられた銃口がゆれる。
男たちは、まだ動かない。

余計なことをしないようにと、命じられているかのように。


「なぜ、空に戻ってきたの。

一生、私の目の届かないところにいてくれればよかったのに。
ヘクターから空を奪ったあなたが、
空で生きているなんておかしいでしょう?

そんなの許せるはずがない!」

サラの声が割れる。

ディオは飛び出そうとした。

ヘクターが誰かなんてことは知らない。

ディオの知らない過去のことなんてどうだっていい。

だだ、黙ってサラの言葉を受けているダナを守りたかった。
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