空をなくしたその先に
動こうとしたディオを制するかのように、
ダナの手がのびてくる。

背中越しにディオの手をさぐりあてるとぎゅっと握りしめた。
サラはそんな様子に気づくことなく話し続けていた。


「だから、私の目の前からいなくなってちょうだい。

私はアリビデイルに行く。

あなたを失ったビクトールの嘆く顔も見ないですむし、

ヘクターの敵だってとることができるもの」


ダナに銃をむけたまま、
サラはゆっくりと部屋を横切ってきた。

サラ以外、誰も動こうとしない。
まるでサラ以外、時を止めてしまったかのように。

ディオもまた、ダナに手を握られたまま動けなかった。


「どうして……ヘクターはあなたを選んだのかしらね?」


ささやくような小さな声。


「……わかりません」


返答も、消えてしまいそうなものだった。
サラは首をふった。
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