空をなくしたその先に
ディオが小柄なので、
二人の頭の位置はほとんどかわらない。

今の今まで手放せなかったトレイが、居心地悪いというように宙をさまよう。


「さよなら、ディオ」


そう言っておいて、
ダナはすばやくささやいた。


「合図したら、格納庫まで走って」


ディオを抱きしめたまま、
ダナは肩越しにサラにたずねた。


「彼の持っているものを渡せば、彼の命は助けてもらえるんですね?」

「もちろん。

ちゃーんと、センティアまで送り届けるところまで約束するわ。

あなたはそれが果たされたか、見届けることはできないでしょうけれど。

あなたがいなくなったあと、彼と交渉するから安心しなさい」

「よかった……じゃあこれでお別れです」


ダナの手がひるがえった。

皿が宙を舞い、サラの顔を直撃しようとする。

両手で顔をおおったサラの腕に皿が命中した。

勢いで引き金をひいたのだろう。
空に向かって銃声が響く。
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