空をなくしたその先に
頭の大部分は帽子で覆われているが、
わずかにのぞく鮮やかな赤い色の髪は、
耳より上で短く切りそろえられている。

ゴーグルを頭の上に押し上げているため、
気の強そうな碧玉色の瞳が輝いているのが見えた。

女性を美人と不美人にわけるとすれば、明らかに美人に分類されるだろう。

それも特上の。


「君は?」

「ダナ・トレーズよ。すぐ見つかってよかった」

「どういうこと?」

「あなたを連れ出すように言われているの」


ダナと名乗った少女は、ディオの手をつかんだ。


「こっちよ」


手を引かれて、駆け降りてきたばかりの非常階段を逆に駆け上る。

先に立つダナは、非常階段の存在を思い出して逃げてきた乗客をかみつきそうな勢いでどなりつけ、道を開く。

だんだんと上の物音が大きくなってくる。

甲板にたどりついた時には、轟音が響いていた。
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