空をなくしたその先に
「悪いけど。

カップは一つしかないから、
飲んだらこっちに回してちょうだいな」


ディオは携帯食に口をつけた。
においから予想されるとおり、美味とは正反対の極地に位置する味がした。

もそもそと咀嚼し、半分以上を水で流し込む。


「こっちに回してって言ったのに!」


ダナが抗議の声をあげた。


「ご……ごめん。
すぐ汲んでくるから」


はじかれるように立ち上がり、遺跡の外に出る。

やってしまったと、自分が情けなかった。

大学では他の学生と同じような生活を送っているとはいえ、

生まれてからの生活習慣によって作られた性格まではなかなか変えようがない。

自分のために他の人間が動くのが、当たり前となってしまっているところがある。

それは寮の仲間にも研究室の仲間にも、
幾度となく指摘されたことだ。

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