空をなくしたその先に
大きくため息をついて、足を投げだし、
石の壁によりかかる。

その仕草が妙にぎくしゃくとしていて、
ディオに壊れた人形を連想させた。


「食べないの?」


携帯食がカップと並ぶように地面に置かれているのを見て、
ディオはたずねた。

ダナの頭がわずかに横にふれた。


「食欲なくて」

「食べないと体力持たないよ?」

「あんなまずい物、食欲ない時に食べる気しないもん」


ディオには食べさせたくせに、自分は食事をとらないつもりのようだ。

確かに、できることなら二度と口にしたくない味だ。


「それにあたし、一晩くらい食べなくても大丈夫だし」


言い訳のようにつけたして、ダナはディオの汲んできた水だけを空にする。

視線がカップとディオの顔と、小さな炎、遺跡の壁とせわしなく動いた。


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