空をなくしたその先に
「ディオ……?」


ためらいがちに、ダナは口を開いた。


「聞いちゃいけないって思ってたから……。

聞かなかったけど……ディオの持っている機密書類って……何?」

「それは」


返答につまって、ディオは口を閉ざした。

何としても、持って帰らなければならない大切な研究成果。

センティア、マグフィレットの両国が総力をあげて完成させたものだ。

もう一通の研究成果を記した書類は、センティアの王立研究所の奥深くにしまいこまれている。

それだけ大事な機密を、ダナに話してしまっていいものだろうかと、自分に問いかける。

二人の間に落ちた沈黙は、居心地のいいものとは言えなかった。

お互い相手に聞きたいことがありすぎて。

それでも、それを聞いてしまったら何かが変わりそうだと、
自分を制して問わずにいる。

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