ストロベリーショートケーキ
「俺聞いてねんだけど」
低い声して、シンが言う。
兄弟なのに、知らないの?
「たぶん…けーちゃん前に言ってた…ぱ、ぱてっ、ぱてしー…」
「パティシエ?」
「そうそれ、パティシエ?さんになるために行くんじゃないのかなぁ、外国」
「…兄貴が、パティシエ……」
パティシエさんになったけーちゃんの姿を想像してるのか、シンが腕を組んで上を向く。
ゆあもおんなじように想像してみる
確か、白い服。
もやもや~んて、想像のけーちゃんの周りが真っ白くなる
うーん、コックさんの帽子しか浮かばないけど、きっとけーちゃんなら何着てもかっこいーんだ。
「ゆあ、それってさ」
シンが話しかけるから、ハッと現実世界に戻る。
「ゆあの為じゃねーの」
ゆあの…ため?
けーちゃんが外国に行くのは、ゆあのためなの?
何それ……なにそれ。
「…ゆあのためなら、行かないで欲しーよぉ……」
急に悲しくなってきた
昨日あんなに泣いたはずなのにな
これ以上泣いたら、ゆあの体から水分無くなっちゃうよ…ってくらい
涙が止まらない