ストロベリーショートケーキ
2.いじわるなシン
3年生初日の朝。
1年学年が上がったからといって、これといって日常生活に変わりはなかった。
「シン!シンっ、はやく!!」
今日も、朝はやくから向かいの家の次男坊を起こしにいく。
これも、ゆあの日課なの。
「朝っぱらからうるせーな、少しくらい待てねーのかよ」
歯ブラシを口にくわえて、鏡の前に立ち、ネクタイを結びながら心が言う。
心(シン)は、佐伯(サエキ)家の次男で、けーちゃんの弟。
けーちゃんはいつもはやくに出ていってしまうから
ゆあとシンは、いつも二人で一緒に登校してるんだ。
「っ、毎朝めんどくせぇなこれ」
今日もシンはネクタイに苦戦中。
これでもかってくらい不器用なシンには、いつまでたっても、うまく結べないらしい。
「もうっ、貸して!」
ぐしゃぐしゃなシンのネクタイを引っ張って、じぶんの方に寄せる。
シンは背が大きいから、私に合わせるように少し肩を下げた。
「はいっ!出来た!!」
きゅっとネクタイを結ぶ。
「さんきゅー」
シンは短くお礼を言うと、歯ブラシをくわえながら、口をゆすぎに洗面所に走って行った。