ストロベリーショートケーキ
「毎朝慌ただしくてごめんねぇ、全く心は…慧(ケイ)は早起きなのにねぇ」
奥からおばさんが顔を出して、はぁとため息をつく。
「ほんと、けーちゃんと大違いだよねー、シンは。だらしがないっていうか、しっかりしてないっていうか…」
「そうなのよ、無駄に背だけ大きくても器は小さいし」
「あー、わかるっ!この前シンの消しゴム借りただけですごく怒られたもんっ」
「あら、そうなの?」
「お前ら勝手に人の悪口で盛り上がってんじゃねぇ」
ゆあとおばさんが盛り上がっていると、シンの低い声が響いた。
「それに、俺が怒ってんのはお前から未だに貸した消しゴムが返ってこないからだ。」
「えー、そうだっけ?」
「そうだ、お陰でここ1週間、俺はシャープペンの上についている小さくて消しずらい消しゴムで乗りきり…」
「もう、相変わらず小さい男ね、新しいの買えばいいじゃない。はい、60円。」
「……………」
おばさんから60円を貰ったシンは、黙ってそれを受けとると、ポケットにしまった。