893〜ヤクザ〜
タコ焼きというものは夏と冬では売上の差が驚くほど違う。



冬場はいい時で一日20万円くらい上がるが、夏場は一日売っても2〜3万円程度。



そんな退屈な夏場を乗り切るには、マンガを読むか、まかない料理を作る事くらいしかなかった。



うちの屋台はタコ焼き以外にお好み焼きとヤキソバも出しとったので、色んな食材をスーパーで買い、鉄板で焼いて楽しんだ。



人間、『暇』という窮地に立たされると面白いほどの馬鹿げた冒険を思い付く。



タコの代わりにサイコロ型のベーコンとチーズ。これは意外にいけた。

タコの代わりに白米。口がモゴモゴして美味くない。

あとはタコ焼きの鉄板のつぼに卵の黄身だけを落としタコ焼きの要領で焼く。これは何でもないただの黄身に終わった。




「お前なにしてんねん(笑)勿体ない事すんなや!」



すかさず若のゲンコツが飛んでくる。



「イテッ……こ…これうまいかなって思ったけど普通に黄身ですわ(苦笑)」



「当たり前やろアホか!!!んな事してやんと鉄板の掃除でもせぇやハゲ!!!」



「へいへい(笑)」



「あーほんで明日の昼間、親父が店見に来るからな。」



「え?親父て組長さんですか??まじっすか??」
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