893〜ヤクザ〜
材料の準備もでき、心の準備もできたので屋台の電球をつけオープンさせた。



「さてと……」



そう呟きながらわしは、バケツの蓋を開けた。



実は今朝、卵抜きの生地とは別に卵入りの生地もちゃんと作って用意しておいたんや。

組長さんが来た時だけ卵抜きを使えばええ。

こういう悪知恵に関しては昔から頭の回転が早いんや。



「余裕のよっちゃんやで♪」



知らないうちにもうわしは一人でも十分きりもり出来るまでに成長しとったんや。

まだまだ気温が高く、売上の期待はもてなかったが、一人で店をやりくりする事に優越感さえ感じとった。



思いおこせばテキ屋のアルバイトに来て数カ月。辛いなぁ辞めたいなぁと考えた事は一度もなかった。

この屋台の中で一生生きていけるんやないかとさえ考えたりもした。



そう……

極道という世界に足を踏み入れるまでは……
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