893〜ヤクザ〜
翌日からわしの『部屋ずみ生活』が始まった。



朝起きてすぐ番犬ホタル(チワワ)の散歩をし、神前の水を変え両手を合わせお辞儀、そのあと組長さんを起こしに行き、朝飯を作る姐さんの手伝いをする。

これがまず朝一わしに課せられた仕事や。



そして組長さんを起こした後、台所のドアを開けた瞬間、鼻をつく納豆のニオイにわしは倒れそうになった。



「くさっ!!!」



思わずオカンに対する言葉遣いと間違えしてしまった。



「くさない!!あんた初日からそんなん言うててどうすんの!!!肛門からでも食べさすで!!!ええな!!!」



「……こ……肛……………」



それよりも姐さんのわしに対する態度が、昨日までとは比べもんにならないくらい違った。

そう。あの原田さんに対する態度と一緒や。



しばらくすると組長さんが寝室からやってきた。



「お……おはよございます!!!」



組長さんと姐さんとわしの3人だけで囲む初めての朝食。



組長さんと姐さんはわしに、以前夫婦揃って懲役に行った時の話をしてくれた。

刑務所には色んな受刑者がいて、殺人、強盗、薬物が多いらしく、極道の組長クラスもたくさんいるらしい。

刑務所で初めて知り合った人間をそこで舎弟関係にしてしまう事も珍しくないとか。



そんな話を聞きながら、わしは苦手な納豆をお茶でごまかし、何とか完食した。

そして姐さんに用事を言われるまで、組事務所に行って時間を潰す事にした。
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