893〜ヤクザ〜
事務所に行くと、本部長の本田君、相談役の古川さん、それに原田君が来ていた。



「平尾このセーターええやろ。7万もしてんぞ。」



そう言って原田君は紙袋から取り出した服を見せてくれた。

それは、黒いセーターの真ん中に金色の龍の刺繍が天を向いて昇っている何とも言いようのない凄い代物やった。



「す……すごいっすね(苦笑)」



「この刺繍は金かかっとるでー。平尾今度、服買ぉたるよってな。」



「ありがとうございます!!!(まさかあんな服買わされへんやろな……。)」



そう言ってわしは頭をポリポリと掻いた。



「っていうかお前パンチ当てろよ。パンチにせぇパンチに。」



「あぁ全然大丈夫っすよ。俺、中学ん時パンチパーマやったんで全く抵抗ないです♪」



「何や……わしより不良やんけ。ムカつくからタバコ買ってこい……。」



「……………(そんな理由で……)」



わしは原田さんから預かった小銭を握りしめ、近くの販売機にタバコを買いに行った。



頼まれたタバコを買い、事務所に戻ったわしは、電話番のイスに座ってみんなの話に耳を傾けとった。
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