893〜ヤクザ〜
事務所に行くと、若い衆3人が麻雀をしとった。



本部長の本田君、藤川君、それに金龍の原田君。



「失礼します……。」



わしは挨拶をして電話番の席にゆっくりと座り、タバコに火をつけた。



「原田、最近女買いに行ってへんのか〜?」



本田君が配牌を眺めながら言った。



「こないだ行ってきましたで梅田のヘルスでっけど(笑)」



「ヘルスかいな(笑)」



「ヘルス言うても最近はめっちゃサービスよろしいでっせ。こないだの女がまためちゃめちゃ可愛ぃーて、2時間延長しましたわ。ギャハハハハ(笑)」



「お前アホやろ(笑)ヘルスで2時間も何すんねん(笑)」



「本部長ヘルスをナメたらあきまへんで!その店、部屋に風呂もマットも置いてて、ローションで(…以下省略)」




まるで子供のようにゲラゲラと笑う原田君の笑顔と、あの龍のセーターを紙のように切り刻んでいた姐さんの笑顔が、わしの右脳と左脳でぶつかり合う。



「………………………。」



俺は何も知らん。

いや知らんというより何も見てないんやから。



後ろめたさを感じながらも、原田君にはその事を黙っておく事にした。
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