《短編》くすんだ鍵
chapter 1
寒々しい部屋のベッドの中、シーツの隙間を縫って入ってくる空気が、あらわにされた肌を撫でた。
それが嫌で身をよじると、あたしの上に乗っている男は、まるで気付いているとばかりに、さらに体を密着させてくる。
塞がれる唇。
「俺、アンナのそういう顔が一番好き。」
あたしは今、どういう顔をしていたのだろう。
けれど考えるのも馬鹿らしくて、肩をすくめて彼の体を押し退けた。
「んだよ、無視か!」
なんて言いながらも笑う男の顔は、暗がりな中でもやっぱり目鼻立ちが整っている。
そこがまたムカつくのだけれど。
「優心に口説かれたってあたしは嬉しくなんかないのー。」
情事を終えて、すっかり冷静になってしまった思考では、何ひとつ感情が揺らぐことはない。
だってぶっちゃけると、あたし達はただのセフレ。
体を繋ぐだけの関係においては、そこに愛も恋も必要なんてないのだから。
つまんねぇなぁ、と言いながら不貞腐れた様子の優心は、体を起して煙草を咥える。
「ごめん、帰るね。」
言って、ベッドから抜け出ようとした時、掴まれたのは、あたしの腕。
「アイツのいる部屋に帰るんだ?」
まるで確認めいた聞き方で問う優心の瞳が真っ直ぐに向けられ、直視なんて出来るはずもなく、目を逸らした。
馬鹿なのは、あたしの方。
「これ以上報われない想いに苦しむなら、もうやめとけば?」
それが嫌で身をよじると、あたしの上に乗っている男は、まるで気付いているとばかりに、さらに体を密着させてくる。
塞がれる唇。
「俺、アンナのそういう顔が一番好き。」
あたしは今、どういう顔をしていたのだろう。
けれど考えるのも馬鹿らしくて、肩をすくめて彼の体を押し退けた。
「んだよ、無視か!」
なんて言いながらも笑う男の顔は、暗がりな中でもやっぱり目鼻立ちが整っている。
そこがまたムカつくのだけれど。
「優心に口説かれたってあたしは嬉しくなんかないのー。」
情事を終えて、すっかり冷静になってしまった思考では、何ひとつ感情が揺らぐことはない。
だってぶっちゃけると、あたし達はただのセフレ。
体を繋ぐだけの関係においては、そこに愛も恋も必要なんてないのだから。
つまんねぇなぁ、と言いながら不貞腐れた様子の優心は、体を起して煙草を咥える。
「ごめん、帰るね。」
言って、ベッドから抜け出ようとした時、掴まれたのは、あたしの腕。
「アイツのいる部屋に帰るんだ?」
まるで確認めいた聞き方で問う優心の瞳が真っ直ぐに向けられ、直視なんて出来るはずもなく、目を逸らした。
馬鹿なのは、あたしの方。
「これ以上報われない想いに苦しむなら、もうやめとけば?」
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