《短編》くすんだ鍵
あれは、ちょうどミツと一緒に暮らし始めた頃だった。
あたしは先輩から初めてホストクラブという場所に連れてこられ、嫌々ながらも付き合いの一環だと諦めて、渋々酒を飲んでいた。
そこで他の人が指名し、卓にやってきたのが、優心。
ゆうくん、ゆうくん、ともてはやされている彼だったが、あたしは興味の欠片すらなかった。
向こうも社交的な振る舞いしかせず、ただの客の友人であり、だからもう二度と会うことなんてないだろうと思っていたのに。
なのにその一週間後、事件は起きた。
ミツからカノジョが出来たという報告を受けたのだ。
それからあたしはどうやって街まで来たのかは覚えてないけれど、とにかくふらっと入ったバーで、何の偶然なのか、優心と再会してしまった。
「アンナ、何か悲しいことでもあった?」
名前なんて名乗った覚えはないし、ましてや呼び捨てにされる権利なんてものもない。
けど、でも、気付けばあたしは、ほとんど他人同然の優心の前で、涙を零していたのだ。
彼は何も聞かず、そんなあたしをそっと抱き締めてくれた。
「よくわかんねぇけどさ、嫌なことなんか全部忘れちまえよ。」
そうやって始まった、あたし達の関係。
ホストの、ましてやナンバーワンの男なんだし、女くらいいくらでもいると思う。
優心が、どうして客でもないあたしとの日々を繰り返しているのかはわからない。
一度も店に誘われたことなんてないから、イロやマクラなんかじゃないのだろうけど。
嘘か真か、冗談めいて口説かれはするものの、そんなのいちいち信じちゃいないから。
だからこそ、何なのかもわからないまま、ただその曖昧な関係をあたしは利用しているのだ。
ね、最低でしょ。
あたしは先輩から初めてホストクラブという場所に連れてこられ、嫌々ながらも付き合いの一環だと諦めて、渋々酒を飲んでいた。
そこで他の人が指名し、卓にやってきたのが、優心。
ゆうくん、ゆうくん、ともてはやされている彼だったが、あたしは興味の欠片すらなかった。
向こうも社交的な振る舞いしかせず、ただの客の友人であり、だからもう二度と会うことなんてないだろうと思っていたのに。
なのにその一週間後、事件は起きた。
ミツからカノジョが出来たという報告を受けたのだ。
それからあたしはどうやって街まで来たのかは覚えてないけれど、とにかくふらっと入ったバーで、何の偶然なのか、優心と再会してしまった。
「アンナ、何か悲しいことでもあった?」
名前なんて名乗った覚えはないし、ましてや呼び捨てにされる権利なんてものもない。
けど、でも、気付けばあたしは、ほとんど他人同然の優心の前で、涙を零していたのだ。
彼は何も聞かず、そんなあたしをそっと抱き締めてくれた。
「よくわかんねぇけどさ、嫌なことなんか全部忘れちまえよ。」
そうやって始まった、あたし達の関係。
ホストの、ましてやナンバーワンの男なんだし、女くらいいくらでもいると思う。
優心が、どうして客でもないあたしとの日々を繰り返しているのかはわからない。
一度も店に誘われたことなんてないから、イロやマクラなんかじゃないのだろうけど。
嘘か真か、冗談めいて口説かれはするものの、そんなのいちいち信じちゃいないから。
だからこそ、何なのかもわからないまま、ただその曖昧な関係をあたしは利用しているのだ。
ね、最低でしょ。