《短編》くすんだ鍵
堪らずまた顔を俯かせた。
優心はあたしの髪を梳かしながら、
「別に俺を見ろとか言うつもりねぇけど、お前が泣いてる顔は、あんま好きじゃねぇからさ。」
だから区切りをつけるべきだと、彼は言う。
ただのセフレだから、と言って優心の言葉を聞こうともしなかったけど、でももう誤魔化せないのかもしれない。
「どうしてロマンスのナンバーワンが、あたし如きに固執するの?」
「ホストだからとか、それこそ関係ねぇだろ。
俺とお前は、今ここでは、ただの男と女なんだから。」
「何それ、好きだよー、とかは言わないわけだ?」
「言ってほしい?」
逆に聞かれて困ってしまう。
やっぱりこういう駆け引きにおいて、あたしなんかじゃ勝てるはずもない。
だからこそ、結局のところこの人が、何を考えているのかなんてわからないのだけれど。
「嫌いよ、アンタなんか。」
「それは最高の褒め言葉でーす。」
スカした顔と、煙草を咥える憮然とした態度。
何だか悩んでいた全てのことがどうでもよくなってきて、あたしは肩をすくめて立ち上がった。
「お風呂、借りるから。」
「一緒に入ってあげましょうか?」
「無理だし、嫌。」
「あーっそ。」
こんなことがある度に、あたしの中で確実に、優心の存在が大きさを増していく。
ミツを諦めることほど簡単なことはないというのにね。
優心はあたしの髪を梳かしながら、
「別に俺を見ろとか言うつもりねぇけど、お前が泣いてる顔は、あんま好きじゃねぇからさ。」
だから区切りをつけるべきだと、彼は言う。
ただのセフレだから、と言って優心の言葉を聞こうともしなかったけど、でももう誤魔化せないのかもしれない。
「どうしてロマンスのナンバーワンが、あたし如きに固執するの?」
「ホストだからとか、それこそ関係ねぇだろ。
俺とお前は、今ここでは、ただの男と女なんだから。」
「何それ、好きだよー、とかは言わないわけだ?」
「言ってほしい?」
逆に聞かれて困ってしまう。
やっぱりこういう駆け引きにおいて、あたしなんかじゃ勝てるはずもない。
だからこそ、結局のところこの人が、何を考えているのかなんてわからないのだけれど。
「嫌いよ、アンタなんか。」
「それは最高の褒め言葉でーす。」
スカした顔と、煙草を咥える憮然とした態度。
何だか悩んでいた全てのことがどうでもよくなってきて、あたしは肩をすくめて立ち上がった。
「お風呂、借りるから。」
「一緒に入ってあげましょうか?」
「無理だし、嫌。」
「あーっそ。」
こんなことがある度に、あたしの中で確実に、優心の存在が大きさを増していく。
ミツを諦めることほど簡単なことはないというのにね。