《短編》くすんだ鍵
「ホントはアンナ、カレシ出来たんじゃないのー?」
「出来てたらあたしもっと浮かれてるわよ。」
「そっか、だよな。」
珍しくミツが苦笑いを浮かべたことに驚いた。
と、いうか、食事が大好きな彼が、今日はいつもよりハイペースでビールばかり飲んでいる。
どこかおかしいと直感で感じ、
「ねぇ、何かあった?」
思わず聞いてしまった。
ミツはやっぱり苦笑いの顔のまま、
「いや俺、愚痴っちゃいそうだしなぁ。」
「何よ、今更。
アンタの仕事での愚痴なんてしょっちゅう聞いてやってるでしょ。」
アンナには敵わないなぁ、なんて言いながらもミツは、もしかしたら誰かに聞いてほしかったのかもしれない。
あのさ、と彼は言葉を選ぶ。
「俺、琴音ともうダメかもなぁ、なんて。」
「……え?」
「つか、好きなんだけど、今はよくわかんなくなってる、みたいな。」
意味がわからない。
それでも心の端で、確かに期待している自分がいる。
「ちょっと、どういうことなの?」
身を乗り出したあたしにミツは、
「琴音、浮気してたんだ。」
「出来てたらあたしもっと浮かれてるわよ。」
「そっか、だよな。」
珍しくミツが苦笑いを浮かべたことに驚いた。
と、いうか、食事が大好きな彼が、今日はいつもよりハイペースでビールばかり飲んでいる。
どこかおかしいと直感で感じ、
「ねぇ、何かあった?」
思わず聞いてしまった。
ミツはやっぱり苦笑いの顔のまま、
「いや俺、愚痴っちゃいそうだしなぁ。」
「何よ、今更。
アンタの仕事での愚痴なんてしょっちゅう聞いてやってるでしょ。」
アンナには敵わないなぁ、なんて言いながらもミツは、もしかしたら誰かに聞いてほしかったのかもしれない。
あのさ、と彼は言葉を選ぶ。
「俺、琴音ともうダメかもなぁ、なんて。」
「……え?」
「つか、好きなんだけど、今はよくわかんなくなってる、みたいな。」
意味がわからない。
それでも心の端で、確かに期待している自分がいる。
「ちょっと、どういうことなの?」
身を乗り出したあたしにミツは、
「琴音、浮気してたんだ。」