《短編》くすんだ鍵
「あたしの方こそ、八つ当たりしてた。」
手に持つコーヒーの熱さに、違う涙が溢れそうになる。
「良いよ、お互い様でしょ。」
亜子は笑い、あたしも少し顔をほころばせた。
人を認めるということを知らなかったあたしが、この寒さの中で見つけたもの。
「百歩譲ってお兄ちゃんはあげるとしても、浮気して悲しませるようなことになったら、あたしアンタを許さないからね。」
「ははっ、それはないからー。」
友情と呼べるのかはわからないけれど、でも随分と心が軽くなった。
もう、亜子を嫌う理由がない。
「あたしただ、恋に打ち破れて実家に逃げ戻ってきただけなんだよ、ホントは。」
「何それ、振られたわけ?」
「振ってくれたら楽だったんだけどね。
おまけに大切にしてた人まで失って、散々だよ。」
今まで誰にも言わずにいたのに。
亜子はこの寒空の下で、何故か楽しそうにくるくると回り始め、
「相手も自分も生きてるなら、やり直せないことなんてないじゃーん。」
きゃははっ、と楽しそうなご様子だ。
あたしは若干引いてしまったが、
「よくわかんないけどさ、自分の気持ちは大切にするべきだと思いまーす。」
亜子はまるで酔っ払いのようで、あたしは愛想笑いだけを返した。
けど、でも、心に響く。
自分の気持ちかぁ、と呟きあたしは、空を仰いだ。
手に持つコーヒーの熱さに、違う涙が溢れそうになる。
「良いよ、お互い様でしょ。」
亜子は笑い、あたしも少し顔をほころばせた。
人を認めるということを知らなかったあたしが、この寒さの中で見つけたもの。
「百歩譲ってお兄ちゃんはあげるとしても、浮気して悲しませるようなことになったら、あたしアンタを許さないからね。」
「ははっ、それはないからー。」
友情と呼べるのかはわからないけれど、でも随分と心が軽くなった。
もう、亜子を嫌う理由がない。
「あたしただ、恋に打ち破れて実家に逃げ戻ってきただけなんだよ、ホントは。」
「何それ、振られたわけ?」
「振ってくれたら楽だったんだけどね。
おまけに大切にしてた人まで失って、散々だよ。」
今まで誰にも言わずにいたのに。
亜子はこの寒空の下で、何故か楽しそうにくるくると回り始め、
「相手も自分も生きてるなら、やり直せないことなんてないじゃーん。」
きゃははっ、と楽しそうなご様子だ。
あたしは若干引いてしまったが、
「よくわかんないけどさ、自分の気持ちは大切にするべきだと思いまーす。」
亜子はまるで酔っ払いのようで、あたしは愛想笑いだけを返した。
けど、でも、心に響く。
自分の気持ちかぁ、と呟きあたしは、空を仰いだ。