《短編》くすんだ鍵
いつもあたしを我が儘な女だと罵りながらも、それでもしょうがねぇなぁ、と言っては、傍にいて笑っててくれた。
寒いと言えばじゃれるように抱き付いてきて、他の男を想うあたしを認めてくれた、あの人。
本当はあたしだけを見ていたことくらいわかっていた。
それでも本心に気付かないフリばかりして、ホストだからとか、モテるから、なんて理由ばかりをつけていた、あの頃。
醜い想いばかりを抱えながら過ごしてきたあたしを、唯一知っているのは彼だから。
「ミツとは付き合えない。」
涙混じりに言うと、
「うん、きっとそう言われるってわかってた。」
「…ごめん。」
「謝るなよー!」
ミツは力なく笑ってから、あたしを小突く。
今になってようやくあたしは、この人に本心を言えたのだろう。
「じゃあこの部屋、どうしよっか。」
それは当然の話題。
「あたし、実家に戻ろうかと思ってるんだ。
もちろんミツに迷惑掛けたくないから、すぐにすぐは出ていかないけど。」
「いや、俺も兄貴が転職ついでにこっち戻ってくるらしくて、部屋探してるって言うから、ここでまた兄弟仲良くルームシェアするのもアリかなぁ、って。」
「そっか、じゃあ決まりだね。」
あの、酔っ払い過ぎた同窓会でも、あたし達はこんな風だったね。
だから顔を見合わせて笑った。
「今までありがとね、ミツ。」
寒いと言えばじゃれるように抱き付いてきて、他の男を想うあたしを認めてくれた、あの人。
本当はあたしだけを見ていたことくらいわかっていた。
それでも本心に気付かないフリばかりして、ホストだからとか、モテるから、なんて理由ばかりをつけていた、あの頃。
醜い想いばかりを抱えながら過ごしてきたあたしを、唯一知っているのは彼だから。
「ミツとは付き合えない。」
涙混じりに言うと、
「うん、きっとそう言われるってわかってた。」
「…ごめん。」
「謝るなよー!」
ミツは力なく笑ってから、あたしを小突く。
今になってようやくあたしは、この人に本心を言えたのだろう。
「じゃあこの部屋、どうしよっか。」
それは当然の話題。
「あたし、実家に戻ろうかと思ってるんだ。
もちろんミツに迷惑掛けたくないから、すぐにすぐは出ていかないけど。」
「いや、俺も兄貴が転職ついでにこっち戻ってくるらしくて、部屋探してるって言うから、ここでまた兄弟仲良くルームシェアするのもアリかなぁ、って。」
「そっか、じゃあ決まりだね。」
あの、酔っ払い過ぎた同窓会でも、あたし達はこんな風だったね。
だから顔を見合わせて笑った。
「今までありがとね、ミツ。」