虹色ハート

生後35日目

 アンナの現在の病状はビリルビン(黄疸の数値で正常値は0.4mg/dl以下)が20を超えています。
 大人でいう肝硬変です。
 以前だと血漿交換すればなんとか何日かは下がっていたのに、もう下がってもすぐに上がってしまうようになりました。
 いよいよ血漿交換でも追い付かなくなってきちゃった。

 こうなると昏睡状態になり、亡くなっていくんだって…。
 そういえばアンナも最近は寝ている事が多くなりました。
 昏睡状態に陥る日が近いのだろうか?

 これまではただ前向きに生きる事だけを考えるようにしていました。
 でも、今は治療のしようがなくなり、これからのアンナにとってどうする事が1番の幸せなのかを考え始める時期になったそうです。

 先生の説明を聞きながらパパとママが泣き出しました。
「現実が受け止められない」
「そんなの絶対にイヤ…」
 パパとママが子供みたいに涙を流している。
 どうかもう泣かないで下さい。
 アンナはパパとママの笑顔が大好きです。

 家に帰ってからもパパとママはアンナの事を話し合いました。
 2人でゆっくりと何時間も…。
 アンナにとって、辛く治る事も延命治療を無理に続けるのが果たして幸せなのだろうか。
 それでも生きれるなら1日でも1分1秒でも長く生きて欲しい。
 だけど、その先には完治や生は待っていてくれない。

 命を左右する判断など誰にも出来るはずがありません。
 せめて思う存分にミルクを飲ませてあげたい。
 今のアンナにはミルクを飲む力も無く、飲めば体の負担になり苦しいだけだろう。
 管を全て取り払って抱いてあげたい。
 もし、アンナの管を外したら、呼吸も出来ないすぐに死んでしまう。
 アンナの幸せって一体何かな?
 パパとママとおねえちゃんに何が出来るのかな?
 何が正しいのか、何が幸せなのか…。
 それさえ全くわかりません。

 パパ、ママ、おねえちゃん。
 アンナは今みんなに愛されて、こうして生きている事で幸せいっぱいだよ。
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