美女の危険な香り
「じゃあ屠蘇(とそ)」


「分かりました。では少々お待ちくださいませ」


 ウエイターがそう言い、すでに粗方仕込みが済んでいる料理を二人分用意するため、厨房へと向かった。


「君は今年はどんな年になると思う?」


「あたし?あたしはそうね……多分浩介さんと愛が深まる一年になると思うわ」


「俺は仕事で疲れそうだな」


 苦笑いを隠せない。


 俺はすでにこの先行われる人事の件で、試行錯誤(しこうさくご)を繰り返していた。


 新年度に古雅の首を切ってしまえば、その次の年度で高橋を処分する。


 使い物にならない連中を、会社の大掃除の意味で徹底して切るつもりでいた。


 やがてものの十分ほどで、テーブルに大量の正月料理が届けられた。


 俺も千奈美も屠蘇を飲んだ後、数の子や黒豆、雑煮などに箸を付ける。
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