美女の危険な香り
 缶ビールも数缶用意されていた。


 俺たちは飲んでは食べ、飲んでは食べを繰り返す。


 腹が満たされたことで、椅子の背凭(もた)れに凭れ掛かり、ゆっくりし始める。


 しばらくの間、俺はじっと考え込んでいた。


“大礒龍造も警戒しないとな。何してくるか分からないし”


 龍造が香原財閥の株を買い取る前に、俺の方から先に買い占めないといけない。


 東証は基本的に時間外取引も許可している。


 しかも直接証券所に赴(おもむ)かなくとも、インターネットを使った取引も出来るのだ。


 俺は香原財閥の株式――おそらく総額二千億円ぐらいの値段だろうが――を買い取るつもりでいた。


 このぐらいのことは企業経営者なら誰でも出来ることだ。


 そして俺はこの株買収を機に香原財閥を傘下に収めてしまい、自在に操るつもりでいた。


 何としてでも龍造の悪しき企みだけは阻止しなければ――、と思っていた。
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