美女の危険な香り
 会社社長という仕事柄か、付き合うために飲まされるケースが多い。


 俺は千奈美と同じベッドにいるときも、大抵ウイスキーの水割りか、カクテルやブランデーなどの洋酒類、そしてビールまで飲んでしまう。


 飲まされると言ったが、実際問題自分から飲んでいるのである。


 缶ビールを二缶手に持って、千奈美に、


「飲むだろ?」


 と訊くと、彼女が、


「ええ」


 と返して、ゆっくりとベッドから起き上がり、襲ってくる立ちくらみを抑え込んだようだ。


 俺が缶を手渡し、互いにプルトップを捻り開けて、飲み始める。


 燃え尽きたタバコは灰皿の上に残っていた。


 吸殻からは火の気は一切感じられない。


 俺たちはどちらからともなく、そっと抱き合い始めた。
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