美女の危険な香り
「分かった。じゃあ二時前に行くから」


 俺は端的にそう言って、電話を切った。


 古雅も高橋も俺が大磯グループと香原財閥の株を買い占める作戦に出たことを知っているのだ。


 すでに情報はあちこちに広まっているだろう。
 

 俺は別にそういったことは一々気に掛けない。


 社長であるのは俺だし、陣頭指揮を執るのも自分だから、古雅たちがどんなことを言ってきても予(あらかじ)め立てていた方針は曲げないつもりでいた。


 合間に秘書課の秘書がコーヒーを淹れにきてくれる。


 俺はそれを啜り取りながら、書類を読み続けた。


 この季節、新年会もあり、何かと食事が豪勢になるのだ。


 まあ、俺自身、普段から昼はステーキハウスに入り、サーロインステーキを口にするぐらいなので、結構贅沢には慣れていたのだが……。


 俺は書類を粗方片付け終わると、末尾の捺印欄に判子を押して、数人いる秘書課の秘書を一人呼ぶ。
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