美女の危険な香り
 マスターがそう言って、まずお冷を出す。


 その後すぐに、肉をウエルダンで焼き始めた。


 俺がその香りに誘われながら、腹をグーと鳴らすと、マスターが、


「腹減ってんだね?」
 

 と訊いてきた。


「ああ」


「何か新年早々、また疲れてない?」


 この勘の鋭さには敵(かな)わない。


「うん。……マスターには全てお見通しかな?」


「ええ。そりゃ長い期間付き合っていただいてるから、分かるよ」


「今、俺が何考えてるか分かる?」


「そうだね。……多分だろうけど、株式のことで頭痛めてるでしょ?」


「図星だな」
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