美女の危険な香り
 俺がそう返して、


「肉の焼け具合、ちょうどよさそうだね」


 と言い、目の前で焼け続けている分厚い牛肉を見つめた。


 マスターが軽めに塩コショウして、


「はい、出来上がり」


 と言い、差し出す。


 俺が肉を添えられたナイフとフォークで切りながら、


“両社に対し、TOBを仕掛けた場合、動く株は一体いくらぐらいになるんだろう?”


 と思っていた。


 それだけ俺は株を買い占めうることに腐心していたのだ。


 これは会社社長にとって決断のときである。


 ここで失敗すれば、元も子もないのだから……。
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