美女の危険な香り
 そのための作戦なのだった。


 同時に俺は優紀子と別れる。


 もうこれ以上、互いに言い合うことはないのだし、言うこともないだろうと思われたので……。


 俺は午後二時の会議開始を待った。


 相変わらず山積みされた資料に目を落としながら……。


 そしてほくそ笑んでもいた。


「龍造の首は俺が獲ったぞ」と言わんばかりに。


 自分の仇敵(きゅうてき)となっている人物を干すほど、嬉しいことはない。


 この業界は過酷なのだった。


 互いに持ちつ持たれつであることもあれば、憎いと感じ出すとキリがないのだし……。


 デスクの固定が鳴った。


 俺が迷わずコードレス式の受話器を取る。

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