美女の危険な香り
 俺は込み上げてくる気持ちを我慢し、料理を食べ終わると、流しで皿とフライパンを洗う。


 そして着替えのシャツ類を持ち、風呂場へと向かう。


 バスタブにお湯を張って浸かった方が体が温まるのだが、俺は面倒くさがり屋なところがあって、別にシャワーだけでもいいと思い、温かいシャワーを浴びた。


 連日東京の街は冷え込んでいて、俺は会社に出勤するのが辛いときもある。


 だが、この季節を乗り越えればまた春が来て、俺も活動しやすくなるのだ。


 まだ一月というのに、花が咲き始めたところもあるのだから……。


 俺は風呂から上がると、タオルで体を拭き、ゆっくりと自室へ戻る。


 優紀子の部屋が妙に静かだ。


 不気味なぐらい。


 確かにさっき、バスルームには若い男の体が醸し出したフェロモンのようなものが残っていて、優紀子と誠が一緒に入浴していたことは分かる。


 ただ、この静まり方は尋常じゃない。
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