美女の危険な香り
「優紀子。……おい、いるのか?」


 と声を掛けた。


 やはり静まり返ったままだ。


 俺は何かあったんだろうなと思い、全室に共通のマスターキーを使って、優紀子の部屋のドアを開錠した。


「優紀子」


 そう呼んだ瞬間、俺は世にもおぞましいものを見る羽目になる。


 優紀子が天井からロープで首を吊り、自殺を図っていたのだ。


 これが若い男との情交に溺れきった女の最後なのだった。


 俺はすぐに近くの総合病院に電話連絡し、優紀子が自室で首を吊っていた旨、伝える。


 救急車はものの数分で到着した。


 追って警察もやってくる。


 事件性がないかどうか、確認するために、だ。

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